バニスターは、日本製紙の紙製バリア素材「シールドプラス」のブランディングをトータルに行いました。
日本製紙は日本大手の製紙会社として、洋紙部門で国内トップシェアを誇るだけでなく、「総合バイオマス企業」を標榜し、洋紙以外にも「木」を原料とした様々な製品を生み出しています。
その1つ「シールドプラス」は、主に食品などに用いられるバリア基材(匂い・水蒸気などをブロックする基材)の分野において開発された、紙由来の新素材。プラスチックに比べて高い環境性能を持ちながら、プラスチックに迫るバリア性能を持つこれまでにない素材としてより高い認知を獲得するため、プロジェクトがスタートしました。
「シールドプラス」は、新ジャンルの製品のため導入事例が少なく、認知が不十分な状態にありました。
既存の顧客に対しても、コスト面など実務的な部分を中心としたコミュニケーションを行なって来たため、ブランドとしての情緒的な繋がりを結ぶための価値体系や、それらを適切に伝える表現物を持っていませんでした。
既存の顧客を維持しながらも、情緒的に共感してくれるような新しいターゲット顧客を設定した上で、価値を再定義し、認知を拡大するための情緒的なコミュニケーションを展開する必要がありました。
バニスターはプロジェクトメンバーとともに、「シールドプラス」の新たなターゲットを協議するワークショップを行いました。
「シールドプラス」は、海洋プラスチックごみ問題を始めとする環境問題の解決に大きく貢献する可能性を秘めた素材です。そのことから、自身のビジネスを通して社会をより良くしたいというビジョンを持った起業家や経営者をターゲットに、社会を良くする将来性を持った新素材として価値を伝えていくことにしました。
ブランドステートメントでは、環境問題に警鐘を鳴らすような、これまでのエコ素材らしいメッセージからの脱却を図り、新素材によって未来がより良い方向へ変わっていくことへの期待感を醸成するようなメッセージを発信。ターゲットを情緒的に突き動かし、社会的なムーブメントを巻き起こすことで、新素材の採用には保守的だったビジネスパートナーに対しても意識変革を促すことを狙いとしています。
また、ブランドの世界観を統一して表現するための、ブランドロゴ、タイプフェイス、カラーパレット、グラフィックデバイスを策定しました。
ブランドロゴでは、「シールドプラス」が、紙にバリア層を塗工して作られる素材であることを、文字の上に足したカラーのラインによってアイコニックに伝えました。
さらに、主にキービジュアルや広告物に使用するためのグラフィックデバイスとして、“バリア”を表すオーバルと帯状のシェイプを採用。 “未来をアップデートするバリア”を制作上のコンセプトに、「シールドプラス」によって人々の生活や、世界の様子がより良いものになっていく様を、“バリア”の向こう側に広がる鮮やかな水彩画の世界によって表現しています。
当社は、環境配慮型製品である紙をベースにしたバリア素材「シールドプラス」を開発しました。開発以降、B2B的なコミュニケーションが中心でしたが、バニスターとのプロジェクトにより、「シールドプラス」が使用されることによる世界観をイメージし、その思いを言葉とビジュアルで伝えることとしました。ブランドをめぐる一人ひとりの選択・行動の際、記憶の呼び水となってくれるものと思います。
日本製紙株式会社 パッケージング・コミュニケーションセンター 金子知生 様