株式会社リーガルコーポレーションの前身は、明治初期に開設した日本初の西洋靴工場。戦前は軍靴の製造を手がけ、戦後は民需に転換。グッドイヤーウエルト式をはじめとする高い技術力で、国内有数の紳士靴ブランドへと発展してきました。なかでもREGALは、同社の中核を担う基幹ブランドとして、高い知名度と売上を誇ります。2002年には、海外展開を見据えたリブランディングを実施し、グローバルビジネスマンをターゲットとしたビジネスシューズブランドとして再構築。しかし、コロナ禍によって革靴を履く機会そのものが大きく減少し、ブランドと生活者のあいだにギャップが生じていました。激変する市場環境の中、2023年、リーガルコーポレーションは次の10年を見据え、REGALブランドのチューニングに着手しました。
最大のきっかけは、コロナ禍を経て進んだ、世の中の働き方 やマインド、働く人のファッションにおける大きな変化です。 REGALは、前回のリブランディング以降、カジュアルシュー ズやウォーキングシューズ、女性用まで商品カテゴリーを拡 大。ターゲット像は曖昧になり、ブランドの輪郭が曖昧にな りつつありました。 社内ではファッションの嗜好やシーン別にサブブランドを設 けるなどの対応が進められていましたが、網羅的なものづく りから抜け出すには至っていませんでした。 また、コアターゲットであったビジネスマン層の高齢化に伴 い、ブランド認知にも課題が見えるように。
もう一つの課題は、ブランドらしさの創出です。 背景となった世の中の働き方やマインド、働く人のファッショ ンにおける大きな変化に対応した世界観が整っていませんで した。ブランドロゴはあるものの、全社を横断した具体的な指 針が不足し、担当者個々の判断に委ねられた場当たり的な表 現方法になっており、一貫したブランドの世界観が形成でき てなかったのです。企業ブランド(リーガルコーポレーショ ン)との関係性も整理されておらず、販売チャネルの構造な ども含め、社内外で複雑化していました。
バニスターは、量的・質的な顧客調査をもとに、年齢やファッションテイストといった従来のセグメント軸ではなく、生活者の内面的な欲求によってコアとなるターゲットをクラスタリング。REGALがもっとも向き合うべき顧客像を明確に描き出しました。
調査から分かったターゲットの欲求は、これまで考えてきたような、革の味わいを楽しむ頑丈で伝統的な靴ではなく、生活の質を上げてくれる靴。生活の質そのものの向上なのでした。こうしてREGALは、今までの自 らの思い込みを更新して、ターゲットとするお客様に「Always feel good」を約束するブランドに舵を切ることになりました。ブランドアイデンティティもこの約束を基に刷新し、「森の中で深呼吸するような心地よさ」を感じるブランドと定義して、製品はもちろん、店舗デザインやコミュニケーション、ECやデジタル施策などにもこのテーマに沿ったものと方向性を定めました。
このように、長い時間をかけて培ってきた技術や知見をそのまま表に出すのではなく、「Always feel good」というターゲット顧客の求める価値に転換することが、今回のREGALブランドチューニングの軸となりました。今後はこのブランド提供価値をすべての活動の基盤とし、日常の生活シーンを彩る情緒的で機能性に優れた軽快な履き心 地の商品を提供するほか、顧客とのタッチポイントとしてブラ ンドの世界観を体感でき、自分らしい最適な一足が見つかる新しい店舗の出店も計画。既存店舗についても順次リニューアルし、生活者の共感を育むブランドとして再成長を目指していきます。













コロナ禍を切っ掛けとした社会の大きな潮流の変化の中で、私たちは未来志向でブランドの変革に踏み出しました。最も大切にしたのは、変わりゆく顧客を知る事でした。顧客を理解するために、調査によってその内面を捉えてブランドの適切性、差別性を丁寧に検討しました。幾多の議論を重ねて、辿り着いた私たちの提供すべき価値は「ずっと心地いい」でした。 私たちが培ってきたモノづくりを背景として、様々なサービスの提供やお困りごとの解決など「履く前も」「履いている時も」そして「脱いだ後も」お客様と一緒に日々の生活の豊かさを実現し、これからもずっと紡いでいきたいと考えています。そんな思いを感じていただける取り組みとなれば幸いです。
株式会社リーガルコーポレーション 商品企画部 部長 勝川 邦彦 様