創業100年を超える油脂加工メーカーで、柱のひとつに石けん事業を持つ太陽油脂は、石けんシャンプーというニッチな商品を長年に渡り育ててきました。
ファミリー向けのカテゴリーでは、既に「PaxNaturon」というコアな層を獲得しているブランドなどを持っていましたが、事業のさらなる成長と石けんシャンプーというカテゴリーのマーケット拡大を目指して、バニスターにパーソナル向けプレミアムラインのブランド開発を依頼されました。
太陽油脂にはファミリー層向けの商品にはしっかりとした実績がありましたが、パーソナル向けブランドでの成功体験がまだありませんでした。
これまで石けんシャンプー市場が、主に生協ユーザーに添加物フリーなど、自然派志向のファミリー層向けの存在となっており、本当にその商品を求めている人に出会えていないという課題がありました。
また太陽油脂のファミリー層向けブランドには、ひまわり油由来の「PaxNaturon」の他に、オリーブ油由来の「PaxOlie」というラインもあり、その役割分担も明確ではありませんでした。
そして新たなパーソナル向けのシャンプーといっても、その対象者が具体的にどんな要望やライフスタイルを持った人たちのことであるのかは不明でした。
石けんには圧倒的にクリーンな好印象はあるものの、石けんシャンプーにはその洗浄メカニズム上、髪が軋むという性質があり、ユーザーにはこれをポジティブに乗り越えてもらう必要もありました。
太陽油脂では、軋みに対する過去のネガティブなユーザー評価がトラウマになっており、それを解消すれば石けんシャンプーは多くのお客様を獲得できると考えて、商品開発を進めていました。
しかし、そもそも石けんには酸化した皮脂汚れをきれいに落とす、他にはない強い洗浄力があることや、その洗浄メカニズムというものが、世の中で理解されているわけでもありませんでした。
「石けんメカニズムで地肌悩みに応え、
香りとデザインで感性価値を醸成する」
バニスターは、まずブランドポートフォリオでカニバリゼーションを起こしている「PaxOlie」を、このパーソナル向けプレミアムラインにリポジショニングすることを提案しました。
そしていくつかの商品コンセプト仮説を作成して、フォーカスグループインタビューを行いました。
その中でこの石けんシャンプーにマッチしたユーザーは、地肌悩みを持っているにもかかわらず、合成界面活性剤シャンプーでその悩みを解消しようと試みて、完全な解決を諦めている女性であると特定しました。
また彼女たちは、入浴の時間を自身をリセットする時間・空間として大切にしており、バスルームに置かれるものや、ヘアケアボディケア商品の香りにも強いこだわりがあるということが分かりました。
バニスターは、このターゲット層を、感性感度が高めで感覚的にモノゴトを捉えるが、その後は自ら取りに行った情報をロジカルに判断できる、リテラシーの高い人たちと分析しました。
そのため、新ブランドは、ターゲットの感性に刺さるデザイン性や香り立ちと、地肌悩みを解消する本質的な能力と、その明確な根拠を有した商品であることが求められました。
上質なオリーブを原材料にした「PaxOlie」のクリーンで健やかな世界観を、オリーブの果実をイメージした「O」を持つロゴと「オリーブデュー(オリーブの雫)」というブランドグラフィックで表現しました。
バニスターは、新しい「PaxOlie」の提供価値を「地肌(肌)の酸化ストレスをリセットして、気持ちまでよくなる」と定め、ターゲットのバスルームにフィットするシンプルで洗練された形状のボトルと、オリーブの雫をモチーフにした明解なラベルデザインを、ブランドのアイコンとして開発しました。
ラインアップは、地肌悩みに応え、入浴時間を楽しむためのヘアソープとヘアコンディショナーの他に、石けんの洗浄メカニズムをわかりやすく体験できるボディソープとボディコンディショナーを揃えました。
またターゲットのバスタイムにとって重要な香りの開発についても時間をかけて行いました。
天然香料だけで作られた香りが、トップノート・ミドルノート・ベースノートと時間の経過と共に変化する香りの旅、フレグランスジャーニーをブランド体験の中に組み込みました。
新たに構築したブランドサイトでは、キービジュアルで世界観を伝えるだけでなく、石けんの洗浄メカニズムも説明して、感性とロジックの両面からブランドの理解を進めることにしました。
ブランドは2021年3月にローンチされ、商品は首都圏のバラエティストアを皮切りに、順次店頭、ECサイトに並び始めています。
旧商品ボトルのキュービックなイメージを残しながら、心地よいバスタイムを醸成する、シンプルで洗練されたシシルエットのボトルを開発。素材もサトウキビ由来の環境に配慮した樹脂を使用しました。
リサイクルPETを使用したリフィルパックは、詰め替えのストレスを低減する形状。
撮り下ろしのキービジュアルをはじめ、「PaxOlie」の世界観を伝えるブランドステートメントなどを掲載したブランドサイトを開設。他にも、石けんの洗浄メカニズム、石けんシャンプーならではの洗髪方法など、お客様の石けん理解を深化する情報を掲載しています。
ブランドサイトとイメージを連動させた店頭販促マテリアルを開発。香りテスターで天然香料100%のフレグランス体験も。
石けんシャンプーで地肌が生まれ変わることを14日間の使用で体験し、軋みの先にある健やかな地肌と髪本来の美しさを体験していただくエントリーパック。ダイアリー型の仕立てで、14日間に起きる変化を解説しています。
十数年間手つかずのパックスオリー。立て直したいと訴えるひとりの女性社員の熱意からこのプロジェクトが始まりました。老舗シャンプー屋の無謀な挑戦にバニスターさんは見事に応えてくれました。知る人ぞ知る機能に洗練された情緒が吹き込まれ、地肌悩みを抱えるお客様が手に取って頂けると確信しています。
お陰様で順調に滑り出しており、新たなパーソナルカスタマーからのお声を聴くのが楽しみです。
太陽油脂株式会社 代表取締役社長 中山 悟 様