バニスターは、サンスター株式会社のオーラルケアブランド「BUTLER」のブランド戦略の構築とパッケージデザインのリステージをサポートしました。
BUTLERは、歯科医院向けオーラルケアブランドとして、1923年に米国イリノイ州シカゴで生まれました。以来、世界中の歯科関係者や患者のニーズに応える高品質なオーラルケア製品を展開し続け、日本でも1988年にサンスターグループの一員となってから、全国の歯科医院向けに販売され、多くの歯科医師や患者から高い評価を受けてきました。
長年プロフェッショナル向けに展開してきたバトラーでしたが、時代や顧客変化に対応すべくブランド創設100周年となる2024年に向け、2022年よりリブランディングに乗り出します。当初バニスターへの依頼は、それまでに検討された内容に基づいたブランド世界観のビジュアライズとパッケージデザインのサポートでした。
BUTLERの抱える最も大きな問題は、ブランドとターゲットの距離が開いてしまっていることでした。その問題を解決するには、ターゲットが誰であるかが重要なファクターです。ターゲットは「歯科衛生士」と定められていましたが、その時点では具体性のあるターゲット像や深いインサイトはあまり見えていませんでした。
ブランド世界観やパッケージデザイン開発の基となるブランドパーソナリティーの具体性や構造の体系化が不十分な状態にあり、ブランド定義を実体化してターゲットに届けるという視点が不足していました。
そこで私たちは課題を整理することから始めました。そのためにまず、ターゲット候補であった歯科衛生士に関する調査データを読み込み、歯科衛生士の中でもどのような人をターゲットにすべきか再検討しました。また歯科衛生士が参加する商業展示等にも足を運び、競合ブランドの動向や参加する歯科衛生士たちを考察するといったことも行いました。
その結果見えてきたターゲットとすべき歯科衛生士は、「患者とのコミュニケーションを大切にし、身近な存在でありたいと思っている人」という人物像でした。これを基に、ターゲットの詳細な特定とそのペルソナ像をつくり、クライアントチーム内で具体的な共通認識が持てるようになりました。
ターゲットが確定すれば、次はブランドの世界観です。私たちはターゲットインサイトをベースに、ブランドの世界観をビジュアライズしました。これまでのBUTLERのような医療感を全面に打ち出した硬質なイメージではなく、理想とするターゲットとの距離を縮める、明るくフレッシュで健康的な世界観が創出されました。
ここまで進めてきたところでブランド戦略を振り返ってみると、ターゲット像が曖昧だった時のままの提供価値では、ターゲットとの距離が縮まりにくいのではないかといった懸念が浮上し、ブランド戦略をブラッシュアップすることになりました。
ターゲットとする歯科衛生士の悩みは、「患者がケアを続けてくれない」ということでした。歯科医院内で受けるケアと自宅で自ら行うケア。この両輪を回し続けることで患者さんの行動が変容したというターゲットの嬉しい「実感を回し続けること」を提供価値に策定しました。
その両輪を回す上でターゲットが商品に求めることは、商品の「わかりやすさ」。ブランドとターゲットとの距離の開きだけでなく、これまで展開してきた商品選択の難しさもハードルになっていました。
選び方が分かりにくいとされていた選択性を容易にすること、またBUTLERのプレゼンスを上げること。この2点に重点をおいてパッケージデザイン開発に着手しました。
ターゲットとの距離感を縮めるためには、これまでのような送り手側の論理ではなく、受け手側から見た魅力を考えたパッケージデザインです。開発にあたっては、先に設定した世界観をベースにしました。
また、ターゲットが求める「わかりやすさ」を実体化するために、情報を階層で整理してデザインのシステム化を行いました。デザインを個別に開発するのではなく、デザインシステムに則して行うことで、ブランドとしての一貫性と、各SKUの選択性が両立できるので、商品数の多いブランドでは大きな効果をあげます。
デザインシステムは、パッケージデザイン会社でも他のSKUへバリエーション展開ができるように、デザインガイドラインとしてまとめました。
既存ロゴの形状を維持しながら、シンボルであったクローパーマークをブランドの世界観に広がりを持たせるグラフィックという位置付けに変更して、新たに定義した世界観に合わせて現代的で明るい色調(ミディアムグレーXオレンジ)にアップデートした。
カラースキームをブルー×レッドからオレンジにチェンジし、クローバーグラフィックをトリミングしながら配置するというデザインへと変更。情報を再構築し、ロジカルに理解しやすいレイアウトデザインを開発。わかりやすさと共に、心が前向きになるようなデザインへと大きな変貌を遂げた。
各タッチポイントは様々な制作会社で個別にデザインされているが、ブランドガイドラインで定義されたルールに則っているため、同じ世界観に収まっており、ブランドとしての一体感が醸成されている。
ブランド全体に関してもブランドガイドラインを編纂して、パッケージからリーフレットに至るまで、一貫性があり、かつ実践的なブランドマネージメントを可能にした。
BUTLERブランドは元々米国シカゴで歯科医へハブラシをテスト販売したJohn O. Butler Companyが始まりで、今年で100周年を迎えます。1944年には細菌学者のCharles C. Bass博士と共に、ハブラシとフロスを用いて口腔内の細菌を除去するバス法ブラッシングを提案し一世を風靡しました。BUTLERは一貫して歯科医や歯科衛生士を通じて製品やサービスを提供して参りましたが、近年は昔からの愛好家が中心で、新たな歯科医・歯科衛生士に対しての認知不足や採用低下が悩みでした。今回、バニスター様と弊社のマーケターや歯科衛生士等と一緒に半年に渡るWorkshopを実施し、ターゲットの歯科衛生士のインサイトを再解釈し、ブランドの提供価値を新たに見出すことで、旧来のブランドのイメージから変革するチャレンジを一緒に進めて参りました。出来上がったブランドロゴやパッケージの印象は歯科衛生士の皆さまからも大変好評で、これからの歯科衛生士と共に長く歩んでいけるブランドに仕上がりました。
サンスター株式会社 オーラルケアマーケティング部 BUTLERブランドマネージャー 三ツ井 一芳 様