ふき寄せタイプの個包装おかき「花色しおん」は、2000年の発売以来、贈答用として多くのお客様に支持されている、中央軒煎餅にとって最も重要な中核商品です。
前回のデザインリニューアルから3年経ち、バニスターは新しいパッケージデザインへと変更する依頼を受けました。売り場は、百貨店や駅ビルなどの店舗と量販店のセルフ販売。顧客は主に中高年齢の女性で、用途は贈答です。
これまでの何度もデザインリニューアルを経てきた商品ですが、いずれも基本のモチーフは「花」です。基本カラーは、紫苑の花の色である薄紫とピンク。高く支持されたデザインとそうでなかったデザインには微妙な差異があり、そのちょうど良い頃合いを探索する必要がありそうでした。古典的すぎても、またモダンでかわいすぎても受容されず。それどころか、同じような花でもサイズよって受容されたりされなかったり。また、好まれるからと言って、これまでと同じようなものでは、売り場が活性化しません。
店頭のショーケースでは、箱よりも個装ピローが並んでいるところがタッチポイントで、セルフの売り場では包装されて積まれた状態になっているという、販売方法で見えがかりが異なることも課題でした。通常のギフトだけでなく仏事にも使われるため、ブレークスルーはなかなか難しそうでした。
「大切な人の想いを届ける 新しいおかき」
「花」「薄紫とピンク」。このふたつを必須としながら、儀礼ギフト向きのしっとりと上品なデザインから、売り場が明るくなるカジュアルなデザイン、そして、依頼内容からは離れていると思われるようなアバンギャルドな表現まで、バニスターは様々なデザインを探索しました。
私たちの提案に対して、クライアント内での意見は当初割れていました。これまでの経緯から推測した受容性の高そうなデザインと、これまでになかった新鮮なデザインとの間で。
最終的に選ばれたのは、中央軒煎餅のおかきの文脈にはなかった、抽象画のような「花色しおん」のパッケージデザインでした。売り上げの多くを占める中核商品のデザインに、問題なく売れそうなデザインでなく、チャレンジングなデザインを選んだというクライアントの決断に、私たちは少し驚きつつも、逆にこの商品にかける強い思いを感じました。
予定調和に甘んじることなく、おかきの未来を開拓する、そんな思いを。
これまで中央軒煎餅ブランドの商品共通で使用していた包装紙も、パッケージと連動した花色しおん専用の包装を作成し、量販店でも存在感を示すことができるようにしました。おかきという懐かしくも安心するようなお菓子の中で、「花色しおん」は新鮮な風を吹かせる存在になるはずです。
過去10年で最も販売数の多い「花色しおん」は、慶事にも仏事にも、幅広い用途でご利用いただき、販売チャネルも多岐にわたります。現状のお客様にはご満足いただきながらも、デザインで新たな価値を付加するという非常に難易度の高いリニューアル・プロジェクトでした。これまでにない素晴らしいデザインを開発していただいたことはもちろんですが、新たな未来を創る選択肢の具体的なご提案と後押しにとても感謝しています。
株式会社中央軒煎餅 代表取締役社長 山田 宗 様